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待っていた日がやって来た [長年の野望]

プロゲステロン検査で産気づくのは48時間以上先だなとちょっと安心し、もうこの時には「帝王切開」で出産せようと気持ちが決まっていたので、できる限り胎児を大きく出来るよう頑張ろうと帰宅してからも強制給餌に励む。 でもこの日の夜はいつも余裕で食べるムース缶を1缶食べきるのが大変そう。 明け方ガサガサと巣作りする音で目が覚めるとひめが段ボールの産箱に入り敷物を掘っていた。 乳腺はさらに大きく膨らんでまるでホルスタインのお乳のよう。

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62日目、しばらく増加していなかった体重が2.9キロになる。 人間の体重計で測っているから100g単位でしか測れないので微妙に増えていたのかもしれないが。 しかし、人間は元の体重の2割ほどしか体重の増加はないのに、ひめはすでに2.1キロから4割ほど増えたことになる。 出生時の仔犬は100g以下だろうとブリーダーさんが言っていたので、2匹で200gとしても残りの600gってなんなのだろう? 朝からさらに食欲がないようで、ムース缶も最後のほうは飲みこみたくない様子。 もしかして?と思い体温を測ってみると37.1度。 体温計の誤差のせいなのか測り始めてから37.6~37.4度あたりをウロウロしていたので特に大きく下がったという感じでもない。 日が暮れてからは私のベッドで熱心にホリホリ。

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掘った後は姿が見えなくなったなと探してみると、布団とカバーの間に入ってゴソゴソしている。 この日4回目の給餌はさらに食欲がないようで今までにないくらい飲みこむのを嫌がる。 仕方がないので缶詰はあきらめてスタミノール+子犬用ミルクをなめさせる。。。が、直後に全部吐いてしまった。 体温を測ってみるとやはり37.1度で平熱時と0.5度くらいしか変わらない。 普通は1度以上下がるはずなんだけど、変だな~。

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63日目。 未明より落ち着かない様子のひめ。 体温を測ってみると36.9度。 あら、さらに下がっている。 なんとなく不安そうな感じでウロウロする。 トイレに行っておしっこをするがちょっとしか出ていない。 うんちをして、またおしっこをするがやっぱりちょびっとしか出ていない。 そして、いきなり吐いた。 間違いない、これってお産が近づいているんだ。 でも、ホルモン検査では今日の夕方以降の予定じゃなかったのかい?  病院は8時からだから、慌ててもしかたない。 身支度をして、もし車中でお産になっても大丈夫なように必要なものを用意しておく。 自宅から福生の病院までは約20キロ。 昼間でも1時間で着くので早朝ならもっと早く到着するだろう。


7時半に病院の駐車場に到着。 ひめはクレートに入れてきたけれど陣痛は始まっていなかった。 8時前にスタッフも出勤してきた。 おお先生も私の車に気が付いて「来るなら電話してから来てよ~準備もあるんだから」と言われる。 携帯番号入りの名刺はもらっているけれど、早朝に電話をするのは気が引けるし私はあまり緊急だと思っておらず、混んでたら待っていればいいか、、、程度の気持ちだったんだな。 産気づいたと言ったら「じゃ、一番で切ろうか」となり院内へ入るともうスタッフはそろっている。 すぐにひめは2階の手術室に連れていかれ、私が上がっていくともう手術台に大の字に寝かされマスクで麻酔をかけられている。 お腹も局所麻酔の注射をされて、院長先生が正中切開を始める。 私は使い捨ての帽子とマスクを渡され足場代をもらって見学。 すぐに子宮がお腹の上に出され胎児を摘出。

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仔犬を渡されて出入り口付近に屈み込み、おお先生に教わりながら羊膜をはがす。 膜は2枚重ねになっていてぬるぬるして破きづらい。 膜をはずしたらへその緒を糸で縛って鋏で切り、吸引器を使って羊水を吸い出す。 今はこんな便利なものがあるので手で持って降ったりはしなくてよいのだ。(たまに子犬を飛ばす人もいるので今は推奨しないみたいだし) ティッシュとタオルで体をふいて乾かす。 刺激している間に仔犬はパクッと口を開けて鳴き声を出し始める。 切ったへその緒の下に小さい出っ張りが見える。 あら、男の子だ! もう一匹は・・・、あら、こっちも男の子! 思わず「ざんね~~~ん」の声が出る。

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仔犬収納用に持ってきた靴の箱にホカロンを入れてその上にタオルを敷いて仔犬を入れる。 元気にピーピー泣き続けている。

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あら? 何か黒いものが見えるぞ。 後で気が付いたんだけど、片方の子のへその緒を縛った糸が取れていた。 でも出血はしていなかったので臍帯からの出血ってすぐに止まるみたいだ。

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手術は切り始めてから傷口を縫い終わるまで14分で終了。 ひめのところに行ってみるともうマスクをはずされ、うっすらと意識が戻ってきている。 抱き上げると陰部から大量のドロっとした赤黒い液体が出てくる。 出血は数日続くそうだ。

クレートに入れるとまだうまく動けなくて暴れる。 待合室に移動して麻酔がきれて落ち着くまで抱いている。 隣では靴の箱の中で仔犬が鳴き続ける。 15分も抱いていただろうか。ひめが落ち着いたので支払いを済ませて帰宅。 ひめは後部座席に置いたクレートの中で眠り続け、子犬は運転席の横に置いた靴の箱のなかでず~~~っと泣き続けていた。


帰宅してから早速子犬の体重測定。 けっこうしっかりした感じだなと思っていたら、なんと!130g以上ある。

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動きまわるので数値が安定しないが、こちらも130g越え。

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ひめは血や体液で汚れた体を蒸しタオルで拭いてあげる。 パンパンだったお腹はしぼみ、傷口が大きくて痛々しい。

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クレートの上部をはずして休息中。 ひめは昏々と眠っている。

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子犬がピーピーとうるさいので、とりあえず用意していた缶入りミルクを開けて温め、哺乳瓶で飲ませてみる。 ちょこっと飲んでふと見ると黒くて硬いうんち(胎便)をだした。

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子犬に乳首をあてがってあげると吸い始める。 ひめのお腹は傷口からも白い液体が出ていた。 おそらく切った真ん中にも乳腺があるから、そこからしみ出してくるんだと思う。

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日が暮れてからベッドへお引越し。 子犬はそっくりで見分けがつかないので、片方の子の首にタコ糸を巻いて印を付けてみた。

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本能ってすごい。 誰にも教わってないのに、乳首に吸い付きグイグイ引っ張ったり前足で押したりしながら乳を飲む。

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おっぱいのあとは私がティッシュで刺激しておしっこをさせる。 黄色い液体がぽたぽたと出てくる。 兄弟を枕にして眠っている顔は目が離れていてはっきりいって変な顔! 下唇も出てないか?

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こちらは枕にされていたほうの子。 生まれたばかりでもちゃんと白い爪が生えている。 耳たぶは分厚くてまだ耳の穴が開いていない。

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2日前に測ったホルモン値はほとんどあてにならず、体温も教科書通りには下がらず、正確だったのは出産予定日だけだった。 やはり机上で覚えたことよりも、日常を共にしていれば「気配」でわかることがたくさんあるので、注意深く見ていくことが一番大事な気がした。


出産の方法に関してはかなり悩んだ。 一般的に犬のお産は自宅で自然に任せてというのが多いと思う。 獣医師を探す時ブリーダーさんが、人間は診療科目がわかれているのに動物病院はなんでも診るのが普通だから、お産のことをあまりわからない先生も多いと言った。 産科を得意とする獣医師でなければ診てもらう価値があまりないと。 福生の病院は月に少なくとも20件は帝王切開をやるそうだ。 手術方法もかかる時間も事前に説明をしてもらい、自然分娩で産ませるより子犬が助かる確率は帝王切開のほうが高いとおお先生は断言していた。 料金もブリーダーさん価格で破格に安い。 最初は自分で取り上げてみたいと思った。 もしお産が昼間になるなら自分でチャレンジして手に負えないようならそれから病院に連れて行ってもいいのではないかとも考えた。 でも、取り上げてみたいのは自分が感動したいからというのが一番の理由ではないかとも思った。 もしもハプニングが生じた時、リスクはすべてひめと仔犬が負うことになる。 すべてひとりで判断して車の運転もひとりでやって病院に駆けつけることになるかもしれない。 冷静でいられるだろうか? 考えた末に計画的に帝王切開で産ませることに決めた。 レントゲンで胎児が足側からの出産になることがわかった時、迷いも消えていた。 術後のひめのお腹の傷を見て申し訳ないことをしたと思う。 もちろん、交配も出産もすべて私が望んだことでそこに犬達の意思や希望は少しも入っていないのだから。 しかし帝王切開であっても仔犬を羊膜から出している時、何とも言えない感動がこみ上げてきた。 命ってすごいなぁと思う。


ひめ、頑張ってくれてありがとう。 子犬達、無事に産まれてきてくれてありがとう!



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